自動運転車両は目と脳の役割を果たす「ADK(Autonomous Driving Kit:自動運転キット)」と、体にあたる「ADシャシ(Autonomous Driving Chassis)」で構成されています。
ADKに生きるいすゞの知見
ADKの開発はセンサーやAIに関する技術がベースとなりますが、センサーの配置やAIの判断基準の検討には、自動車OEMメーカーとしていすゞが培ってきた商用車の知見も欠かせません。協業先であるスタートアップの知見といすゞの知見を掛け合わせ、OEMメーカーならではのADK開発を推進しています。
ADシャシ
ADシャシは、長年蓄積した車両に関する技術をベースに開発を進めており、いすゞのノウハウが直結する部分です。自動運転シャシが通常のシャシと異なるのは「冗長性」が求められる点です。
システムの異常時にも人の手を介さず安全に停止するべく、「走る・曲がる・止まる」装置を電子制御化し、制御系と電源系を二重化した安全冗長設計の車両制御プラットフォームを構築しています。そして、自動運転が社会実装された後の量産品質や安定稼働の観点からも、商用車メーカーであるいすゞが自動運転ソリューションを手掛ける意味は大きいと認識し、取り組みを進めています。
商用車の自動運転に求められること
複雑な交通環境を認識したり、歩行者の突発的な動きを予測したりする認知能力は乗用車同様ですが、商用車はこれに加えて「巨大な慣性(重さ)」を考慮した車両制御が求められます。
たとえば25トンもある大型トラックの場合、ADKが「止まれ」と指令を出しても、即座には止まれません。実際に車体が反応してブレーキが利き始めるまでには、乗用車と比べて大きな時間差が生じます。この時間差を踏まえた制御が必要です。
しかも、ただ止まればいいわけではなく、商用車は大切なお客様の荷物を損なう「荷崩れ」を防ぐために、急ブレーキは厳禁です。路線バスの自動運転においても同様で、少しでも急なブレーキをすると乗客が転倒する危険性が高まります。
「物理的に止まりにくい車」を、安全に止める。この課題をクリアするためには、数百メートル先の状況を予測し、極めて繊細にブレーキをミリ単位で調整しなければなりません。
さらに、積載量によって重量も重心も変わるため、同じ車両でもその時々の状況で全く別の乗り物に変わってしまいます。「空車」の時と「満載」の時ではトラックの挙動がまるで異なります。そのためADKは、刻一刻と変化する「今の車体の状態」をリアルタイムに計算しながら走らなければなりません。人間のドライバーが経験的に培うような「ビークルコントロール(車両制御)」が、商用車の安全な自動運転実現のために求められます。