いすゞモーターズサウスアフリカ(IMSAf)は、教育支援や環境保全など、さまざまな社会貢献活動に取り組んでいます。

 

こうした活動を、IMSAfでは「CSI(Corporate Social Investment=企業の社会的投資)」と呼んでいます。企業の社会的責任を意味するCSRと似た考え方ですが、あえて「投資」という言葉を使っているのには理由があります。

 

IMSAfにとって社会貢献とは、企業としての責任を果たすためだけの活動ではありません。地域社会やそこに暮らす人々、そして環境のために、自らの意思で行う未来への投資なのです。

 

なぜ、社会貢献を「投資」と捉えているのでしょうか。南アフリカが抱える社会課題やIMSAfの取り組みについて、コーポレートアフェアーズ部門の責任者を務めるNandi Matomela(ナンディ・マトメラ)さんに話を伺いました。

Nandi Matomelaさん
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Nandi Matomelaさん

車両をつくるだけではない。南アフリカとともに歩むいすゞ

――まず、 IMSAf の事業について教えてください。

 

Nandi さん:いすゞは南アフリカで60年以上にわたり事業を展開してきました。1978年からはピックアップトラックの生産を開始しており、南アフリカの人々の移動や輸送を長年支えてきた歴史があります。

 

2018年1月には、いすゞの完全子会社としてIMSAfが設立されました。現在は、ピックアップトラックやその派生車のSUV、トラックの製造・販売を行い、アフリカ市場に車両を届けています。

こうした事業を通じて、私たちは地域社会が抱えるさまざまな課題を身近に感じてきました。失業や貧富の格差、教育機会の不足、気候変動による影響などです。

 

そのような現実を知るなかで、私たちの役割は車両をつくることだけではないと考えるようになりました。南アフリカの社会や経済がより良くなるよう、企業として貢献することも大切な役割だと考えています。

――南アフリカでは、具体的にどのような社会課題があるのでしょうか。

 

Nandi さん:南アフリカが抱える課題は複雑で、互いに深く関係しています。そのため、解決には長い時間と、さまざまな組織の協力が必要です。

 

大きな課題の一つが、貧富の格差です。特に地方や支援が十分に行き届いていない地域では、貧困や失業に加え、生活に必要なサービスを利用することも難しい場合があります。
南アフリカ統計局のデータによると、約2,320万人、人口の37.9%が、基本的な生活に必要な費用を十分にまかなえない水準の貧困状態にあります。

 

教育も深刻な課題です。10歳になっても文章を読んで内容を理解することが難しい子どもが多く、その後の学習や将来の選択肢にも影響しています。また、工学や金融、ITといった分野では専門的な人材が不足しており、経済成長の妨げとなっています。

 

さらに、気候変動も人々の暮らしに大きな影響を与えています。南アフリカの気温は世界平均のおよそ2倍の速さで上昇しており、異常な高温や降雨パターンの変化が起きています。過去40年間には40件以上の大規模な洪水災害が発生し、その頻度や規模も増しています。

 

こうした社会課題が、私たちのCSI活動の出発点となっています。

――そのような課題に対して、IMSAfはCSI活動を通じて何を実現しようとしているのでしょうか。

 

Nandi さん:私たちはCSIを、人々や地域社会、そして南アフリカの持続可能な未来への投資だと考えています。
私たちの考え方はシンプルです。車両をつくることは、いすゞのビジネスの一部にすぎません。地域社会をより良く、より強くしていくことも、私たちにとって大切な使命なのです。
いすゞが掲げる「あなたと共に『運ぶ』の課題を解決する」というミッションのもと、CSIでは、地域社会が困難を乗り越える力を高めること、教育環境を改善すること、将来を担う人材を育てること、環境を守ること、そして若者の可能性を広げることを目指しています。

 

そのために重視しているのが、活動の成果を具体的に確認できること、そして長期的な価値を生み出すことです。

――活動によって、実際にどのような成果が生まれたのかを確かめることが重要なのですね。

 

Nandi さん:そうです。私たちが目指しているのは、一度だけ支援をして終わることではありません。
地域の人々が本当に必要としていることを理解し、その効果を確かめながら、長く続く支援に取り組むことが大切だと考えています。 

地域社会・教育・環境保全。3つの分野で広がる取り組み

――具体的には、どのようなCSI活動を行っているのでしょうか。

 

Nandi さん: IMSAfのCSI活動には、大きく3つの柱があります。「地域社会」「教育」「環境保全」です。

 

地域社会

地域社会への支援では、南アフリカの人道支援団体「Gift of the Givers」と協力し、災害や生活上の困難に直面している人々を支えています。
例えば、今年1月に発生した火災への対応でも、被災地域への救援活動を支援しました。突然の災害に見舞われた地域に、迅速に支援を届けることが重要だと考えています。
2025年度には、3台の給水車を活用し、長引く干ばつに苦しむ地域へ合計2,960万リットルの清潔な水を届けました。

また、3台のいすゞD-MAXを使った食料支援にも取り組んでいます。その一つが、外来種のコイを活用した食料支援です。南アフリカでは、外来種のコイが川や湖の生態系に悪影響を与えることがあります。そこで、捕獲したコイを食料として活用し、支援を必要とする地域の人々に届けています。この取り組みは、食料不足への対応と、自然環境の保全を同時に進められる点が特徴です。

 

D-MAXは、支援団体のスタッフが地域へ移動したり、食料を届けたりするために役立っています。こうした活動によって、52万6,000人に食料を届けることができました。

 

教育

教育分野では、読み書きや数学といった基礎学力の向上から、科学、技術、工学、芸術、AIなど、将来に役立つ知識や技能を学ぶ機会づくりまで、幅広く支援しています。

 

例えば「Rally to Read」という教育支援プログラムには、100万ランド(1ランドはおよそ7~9円)を投資しました。Khulile小学校、St Albans小学校、Kayser Ngxwana小学校の3校を支援しています。

 

例えばKhulile小学校では、3年生の英語の平均点が2023年の58.74%から2025年には68.70%に向上しました。支援する3校全体でも、学年の平均成績が改善しています。

Khulile小学校
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Khulile小学校

基礎学力だけでなく、最先端の技術に触れる機会も提供しています。
Astra小学校には、120万ランドを投じて初めての「AI・プログラミング・ロボティクス学習施設」を設置しました。ロボット教材やタブレットの提供、教室の改修、教員向けの研修などを行い、850人の子どもたちがプログラミングやロボット技術、論理的な考え方、問題解決の方法を学べる環境を整えました。
さらに2026年7月には、Khulile小学校に約200万ランドを投じて2カ所目の学習施設を設置しました。ここでは、就学準備学年から7年生までの650人が、新しいデジタル技術に触れることができます。

理数系教育にも力を入れています。
Govan Mbeki数学開発センターとの教育プログラムには50万ランドを投資しました。その結果、参加した子どもたちの数学の成績は30%、科学の成績は39%向上し、それぞれの目標である24%、16%を上回りました。

Govan Mbeki 数学開発センター
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Govan Mbeki 数学開発センター

また、ネルソン・マンデラ大学のメカトロニクス教育にも30万ランドを拠出し、40人の学生を支援しています。学生たちは、IMSAfの工場に関連する実際の技術課題に触れながら、大学で学んだ知識がものづくりの現場でどのように役立つのかを学んでいます。

 

環境保全

環境保全では、さまざまな生き物と自然環境を守ること、資源を無駄なく活用すること、クリーンエネルギーを利用すること、そして人々の環境意識を高めることに取り組んでいます。
その一つが、海鳥の保護活動を行う「SANCCOB(南部アフリカ沿岸鳥類保護財団)」への支援です。

 

SANCCOBは、保護が必要な海鳥を救助し、治療やリハビリテーションを行っています。こうした活動には、昼夜を問わず安定した電力が欠かせません。
そこで、IMSAfは50万ランドを投資し、太陽光発電設備の整備を支援しました。
これにより、停電が起きても保護活動を続けられる電力を確保できるようになり、24時間体制での海鳥のケアを支えています。
さらに、月々の電気料金を85%削減することができました。電気代を抑えられた分、海鳥の救助や治療、リハビリテーションに、より多くの資金を使えるようになります。

 

海鳥は海の環境の健全さを知るうえで重要な存在です。海鳥を守ることは、南アフリカ沿岸の豊かな生態系を守ることにもつながっています。
 

SANCCOB に設置された太陽光発電パネル
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SANCCOB に設置された太陽光発電パネル

植樹活動にも取り組んでいます。環境保全団体と協力して18万ランドを投資した活動では、当初400本を目標としていましたが、実際には4,748本の木を植えることができました。

 

植樹は、生き物の生息環境を回復させ、二酸化炭素の吸収を促すだけでなく、地域の人々が環境問題について考えるきっかけにもなります。

 

また、資源を繰り返し利用する循環型社会の実現に向けて、地域でのリサイクルや廃棄物管理を支援する取り組みも進めています。

数字で見える成果と、地域社会からの評価

――これまでさまざまな成果が生まれていることがわかりました。こうした活動は、社外からも評価されているのでしょうか。

 

Nandi さん:はい。IMSAfの取り組みは社外からも高く評価されています。

 

2023年には、地域社会への貢献が評価され、「Herald Nelson Mandela University Citizen of the Year Award」の企業部門を受賞しました。この賞は、地域の人々から推薦された個人や団体の中から、希望を与え、人々のために尽くし、社会に良い影響をもたらした活動を表彰するものです。
また、2024年と2025年には、南アフリカ自動車製造業者協会(naamsa)の「Accelerator Awards」で、地域社会への貢献に対する特別表彰を受けました。
さらに、東ケープ州の輸出企業を対象とした表彰では、環境保全やサステナビリティへの取り組みが評価され、2024年と2025年に「SJM Flex Environmental Merit Award」を受賞しています。

SJM Flex Environmental Merit Award
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SJM Flex Environmental Merit Award

こうした評価は、私たちが拠点を置くネルソン・マンデラ・ベイ都市圏で、責任ある企業として地域社会に貢献していることが認められた証しだと考えています。

 

企業が事業を続けていくには、地域社会からの信頼が欠かせません。私たちはCSI活動を通じて、地域の人々とともに歩み、社会をより良くしようとする姿勢が評価されたことを、大変うれしく思っています。

一度きりの支援で終わらせない。地域との協力が生み出す長期的な価値

――これほど幅広い活動を進めるなかで、どのような難しさがありますか。また、それをどう乗り越えているのでしょうか。

 

Nandi さん:最も難しいことの一つは、地域の人々が本当に必要としている支援を見極めることです。私たちが「きっとこれが必要だろう」と考えた支援が、必ずしも地域の実情に合っているとは限りません。
南アフリカの社会課題は複雑で、一つの組織だけで解決できるものではありません。
だからこそ、私たちは地域の事情をよく理解し、豊富な経験を持つ信頼できる団体と取り組んでいます。そうすることで、本当に支援を必要とする人々に、効果的な支援を届けられると考えています。
2025年度は、地域社会、教育、環境保全の多くの取り組みで、年間目標を達成、または、これを上回る成果を上げることができました。これも、パートナーとの協力があってこそだと思います。

 

もう一つの課題は、支援を一度きりで終わらせず、長く価値を生み出す活動にしていくことです。
そのために、読み書きの力を高める教育支援や若者の技術習得、環境保全、再生可能エネルギーの利用、地域でのリサイクル活動など、長期的な成果につながる取り組みを重視しています。
また、活動の進み具合や成果をきちんと確認し、社内でも関係者が協力しながら、計画的に活動を進めています。

今日の投資が、明日のより良い社会をつくる

――最後に、今後の目標について教えてください。

 

Nandi さん:今後も「地域社会」「教育」「環境保全」の3つの柱を中心に、具体的な成果を生み出す活動をさらに充実させていきたいと考えています。

そして、すべての活動に共通して大切にしたいのは、成果を確かめ、改善を続けることです。何がうまくいっているのか、何を変えるべきなのかを見極めながら、活動をより良いものにしていきます。

私たちが目指しているのは、社会貢献を通じて、いすゞの「Moving the World – for You」というパーパスと、「運ぶ」でより良い暮らしを実現するという使命を形にすることです。

モビリティの力、未来への責任ある投資、そして信頼できるパートナーとの協力。
これらを組み合わせることで、困難にも負けない、より強い地域社会をつくり、長く続く価値を生み出していきたいと考えています。

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